
ChatGPTなどの生成AIというと、文章作成や調査、仕事の効率化に使うイメージが強いと思います。私自身、AIの使い方を大きく分けると「相談」「調査」「教育」「仕事」の4つくらいではないかと考えています。
今回はその中でも「教育」での活用です。中学生の子どもが勉強するときに使えるように、日本史・地理・理科の学習ゲームをWebサイトとして作成しました。
目指したのは、問題をたくさん解いて暗記するためのツールではありません。「なぜそうなったのか」「その結果どうなったのか」という、知識同士のつながりを理解するためのツールです。
実際に作成したものはこちらです。
AIは「答えを聞く」だけでなく「学ぶ仕組みを作る」ことにも使える
教育でAIを使うというと、分からない問題をChatGPTに質問したり、難しい内容を分かりやすく説明してもらったりする使い方が最初に思い浮かびます。もちろん、それだけでも便利です。
ただ、AIの教育利用にはもう一つ面白い使い方があります。それが、「学ぶための仕組みそのものをAIに作らせる」という方法です。
今回もChatGPTに日本史を教えてもらったわけではありません。「中学生が日本史を理解するためには、どのような学習ゲームにすればいいか」を考えさせ、実際にWebブラウザで使える形まで作りました。
その場で答えを聞けば、その場限りで終わります。しかし学習ツールとして作っておけば、子どもが何度でも利用できます。AIに何かを答えてもらうだけではなく、繰り返し使えるものを作ってもらうというのは、AI活用を考えるうえで面白い方向だと思います。
暗記ではなく「つながり」を理解するゲームにした
今回、特に重視したのが「単純な選択肢問題にしない」ということです。
学校の勉強では、「この人物は何をした人か」「この出来事は何年か」「この用語の意味は何か」と、一つひとつの知識を覚えることが多くなります。もちろん暗記も必要ですが、それだけでは知識がバラバラになってしまいます。
たとえば日本史なら、本当に理解したいのは人物名や出来事だけではなく、「人物 → 行動 → 出来事 → その後の社会」という流れです。
「この人が何をしたのか」だけではなく、「なぜそれをしたのか」「その結果どうなったのか」まで分かれば、歴史上の人物や出来事がつながってきます。
そのため、日本史のゲームでは人物を中心にして、行動と結果を考えられるようにしました。飛鳥時代から現代までを対象にし、300人以上の人物を扱うことも最初から条件にしています。
地理や理科も「なぜ?」を考えるようにする
同じ考え方で、地理と理科も作りました。
地理なら「この地域では○○が盛んです」と覚えるだけではなく、なぜその場所でその産業が発達したのかを考えます。気候、地形、交通、人々の暮らし、産業などをつなげて考えると、地理は単なる地名の暗記ではなくなります。
理科も同じです。現象や公式だけを覚えるのではなく、「なぜこの現象が起きるのか」「実験するとどうなるのか」「その結果から何が分かるのか」という流れを理解することを重視しました。
教科は違っても、知識を一つずつ覚えるのではなく、知識と知識の関係を理解するという考え方は共通しています。
実際にChatGPTへ入れたプロンプト
日本史の学習ゲームを作る際には、ChatGPTに次のようなプロンプトを入れました。
中学生向けに、日本史を学べるゲームを作成して。
スマホ対応。
単純な選択肢問題はやめて。
テスト対策というよりも本質的に歴史が理解できるようにして。
人物を中心にして。
その人物がどんな事をしたのか、その結果どんな結果があったのかが理解できるように。
飛鳥時代から現代まで。
300人以上を収録して。
正解しても不正解でも解説を付けて。
歴史の情報源は信頼できるサイトを複数参照して。
ここでポイントになるのは、単に「日本史のクイズを作って」と頼んでいないことです。
「テスト対策より本質的な理解を重視する」「人物を中心にする」「人物の行動とその結果を理解できるようにする」といった、何のために作るのかという方針をかなり具体的に伝えています。
AIを使うときは、細かな命令をたくさん書くこと以上に「最終的にどういうものを作りたいのか」「何を大事にしてほしいのか」を伝えることが重要です。目的が曖昧なまま「いい感じに作って」と頼むよりも、判断基準を渡したほうが目的に合ったものを作りやすくなります。
正解することより「解説」を大切にした
もう一つ重視したのが、正解しても不正解でも解説を表示することです。
学習ゲームでは正解数や点数に目が行きがちですが、正解したから理解しているとは限りません。たまたま正解することもありますし、反対に不正解でも、その後に「なるほど、そういう理由だったのか」と理解できれば学習になります。
AIを使えば、大量の問題を作ること自体は以前より簡単になりました。しかし教育用のツールで本当に考えたいのは、問題数ではなく「問題を解いたあとに何を理解できるか」だと思います。
100問解いて人物名を覚えることより、一つの問題から「この人物がこう動いたから、その後こう変わった」と理解できるほうが、その後の知識ともつながりやすくなります。
AIなら家庭用の教材も自分で作れる
今回のような使い方をすれば、市販の教材を使うだけではなく、目的に合わせた教材を自分で作ることもできます。
たとえば「英単語を単独で暗記するのではなく短い会話の中で覚える」「数学の文章問題だけを練習する」「理科の実験結果から原因を考える」「間違えた問題を違う角度からもう一度出題する」といった学習方法も考えられます。
さらにAIにHTMLやJavaScriptの作成を手伝ってもらえば、今回のようにスマートフォンやパソコンのブラウザから使える学習ツールにすることもできます。
もちろん、AIが作った内容をそのまま信用するのは避けたほうがよいでしょう。特に歴史や理科などの教材では、事実関係の確認が必要です。今回のプロンプトでも、歴史情報について信頼できる情報源を複数参照するように指定しています。
AIに作業を任せながらも、目的を決めること、内容を確認すること、最終的な品質を判断することは人間が担当する。この役割分担は、教育用コンテンツでも変わりません。
この仕組みは企業のWebサイトにも応用できる
今回作ったのは中学生向けの学習ゲームですが、この仕組みは教育だけに使えるものではありません。
自社の事業に関する知識をクイズや診断形式にして、Webサイトを訪れた人に体験してもらうこともできます。うまく設計すれば、顧客自身が自分の課題に気づき、その後の問い合わせにつなげるコンテンツにもできます。
たとえばWeb制作会社なら「あなたのWebサイトで改善したほうがよいところは?」という簡単な診断を作れます。「スマホで見づらい」「問い合わせが少ない」「検索から人が来ない」「更新が止まっている」といった質問に答えてもらい、最後に「現在のサイトでは問い合わせ導線の改善を優先したほうがよさそうです」といった解説を表示します。
そのうえで「具体的な改善方法を相談する」という問い合わせへの導線を用意すれば、単純に「ホームページ制作なら当社へ」と宣伝するよりも、利用者自身が課題を理解した状態で相談してもらえます。
ほかにも、税理士なら経理業務のチェック、工務店なら家づくりに関するクイズ、採用会社なら採用課題の診断、製造業なら用途に合った製品を探す選定ツールなど、いろいろな形が考えられます。
「読むWebサイト」から「使うWebサイト」へ
一般的な企業サイトは、会社概要を読み、サービス内容を読み、料金や実績を確認して、必要であれば問い合わせるという流れになっています。それで十分なケースもありますが、AIを使ったWeb制作が身近になることで、Webサイトの中に小さなツールを置くという選択肢も取りやすくなってきました。
クイズ、簡易診断、チェックリスト、料金シミュレーター、比較ツールなど、訪問者が実際に操作できるコンテンツです。
今回の中学生向け学習ゲームも、その一例です。AIに記事を書かせたり、画像を作らせたりするだけではなく、「ユーザーが実際に使えるものを作らせる」ところまで考えると、AIとWebサイトの組み合わせにはまだ多くの使い道があると思います。
まとめ
今回は、中学生の子どものためにAIを使って日本史・地理・理科の学習ゲームを作りました。
目的は、問題をたくさん解いて暗記することではありません。「なぜそうなったのか」「その結果どうなったのか」というつながりを考え、本質的な理解を少しでも助けることです。
AIというと、質問に答えてもらったり、文章を書いてもらったりする使い方が目立ちます。しかし、自分や家族が使う小さなツールを作るという使い方もできます。
そして、その考え方は教育だけでなく仕事にも応用できます。自社の知識やノウハウをクイズや診断ツールにしてWebサイトへ置けば、お客さんに事業を理解してもらう入口にもなります。
「AIに何を聞こうか」だけではなく、「AIを使って何を作ろうか」と考えてみると、活用の幅はさらに広がるのではないでしょうか。
